2006年 日本穀物科学研究会

第126回例会

2006年6月3日(土)13:30より大阪府立大学学術交流会館多目的ホールにて第126回例会を開催いたしました。。 
テーマ  
 『おいしいお米の炊飯法を伝授します』

講演  
おいしいお米の炊飯方法

                        松下電器産業(株)クッキングシステムビジネスユニット長  宮井真千子氏

自動炊飯器の開発 〜 美味しさへの挑戦 〜              

1.はじめに 〜 炊飯器の変遷 〜
    昭和40年代、自動炊飯器は、日本の高度経済成長とともに普及率を急速に伸ばした。昭和50年代には、家電のエレクトロニクス化の流れの中で炊飯器にもマイコンが搭載されるようになり、マイコンが炊飯のコツ(火加減)を記憶し、浸水も蒸らしも不要、誰でも失敗なく美味しいご飯が炊けるようになった。昭和60年代以降は、便利さだけでなく、美味しさを求める消費者のニーズに応え、IHタイプの炊飯器が開発された。さらに最近では、過熱蒸気を搭載し、ご飯の食味をワンランク上げた炊飯器も登場し、約7万円という高価格にもかかわらず、消費者から好評を得ている。炊飯器は美味しさ競争の時代に入っている。

2.IH(電磁誘導加熱)炊飯器の開発
   IH炊飯器の発売は昭和64年。従来のヒータータイプの炊飯器に比べ標準価格が2倍以上という高価な炊飯器であったが、販売は順調で、現在では市場の約6割がIHタイプの炊飯器である。IH炊飯器の開発は、@日本人にとって美味しいご飯とはどんなご飯か Aそのご飯を炊く条件はいかなるものか、 この2点がポイントであった。短時間で美味しいご飯を炊くには、 浸水条件、昇温条件が大きく影響を及ぼす。浸水条件は、従来の調理科学の常識を超える、糊化開始温度に限りなく近づけることで充分な吸水と甘みが得られることがわかった。この微妙な温度コントロールは、熱応答性の良いIHだからこそ実現できた炊飯ソフトである。

3.過熱蒸気(高温スチーム)の搭載
  IH炊飯器の食味をさらに向上すべく、過熱蒸気を搭載した炊飯器を開発した。
 日本人は、粘りのあるご飯を好む傾向がある。粘りの出現については、お米の持つ特性が最も影響するのであるが、蒸らし時に過熱蒸気を加えると、適度な粘りと甘みが生ずることがわかった。過熱蒸気によって得られた粘りは、従来の過熱蒸気を搭載しない炊飯器で炊いたご飯の物性とは明らかに異なる物性を示した。又、圧力をかけた場合とも異なる物性を示し、過熱蒸気を用いたご飯のほうが官能評価では好まれる傾向があった。 日本人の好みにあった粘りであるということができる。  過熱蒸気の最適条件を求めるために、過熱蒸気の温度、時間を変え、官能評価との相関を求めた。 
  過熱蒸気の最適化については、まだまだ研究途上である。しかしながら、従来のヒーター加熱では得られない粘りや甘みが得られるという点で、炊飯器の食味改善には大きく寄与している。

4.炊飯器の今後の展開
  日本人にとって主食であるご飯を炊く炊飯器は生活必需品である。米の消費自体は減ってはいるものの、日本人の健康を支える基本的な食物である。 また日本人はご飯の味への要求も大変厳しい。炊飯器のクレームの多くは食味に関する内容である。日本人の嗜好に合う美味しいご飯が炊ける炊飯器の開発は、付加価値の高い日本のものづくりの象徴でもあり、引き続き、家電メーカー各社で研究が加速されていくであろう。

<本日の講演内容>
     1.           炊飯器の歴史
     2.           自動炊飯器の構成と火加減
      2−1)マイコンの登場  多機能化へ
      2−2)火加減のコントロール
     3.           IH(電磁誘導加熱)炊飯器の開発
      3−1)美味しいご飯とは?
      3−2)美味しいご飯を炊くための条件   
     4.           高温スチームの応用
      4−1)高温スチームの効果
      4−2)高温スチーム搭載の最新機種
     5.           炊飯器の市場について   

宮井真千子氏
 
 コンビニ用ご飯の美味しい炊き方
                                               炊飯コンサルタント  三好敏弘氏  
三好敏弘 氏 
  
  無洗米とコーティング米のおいしさ

                                     株式会社サタケ 技術企画室  河野元信 氏 

1.はじめに
 60kg以下に減少している米消費量(国民一人当たり年間)を拡大するために,「安心・安全・美味・健康」の消費者ニーズに応える米商品の開発が求められている。ここでコーティング米等を含めた各種無洗米の特徴について紹介する。

2.無洗米
 一般に普通白米は,炊飯前に約4回程度水洗いし,白米重量の約2%前後が洗い流されてしまう。無洗米は単に炊飯を簡便化・利便化してご飯の食味を良好にするためだけでなく,米に含まれるビタミンやミネラル等の微量栄養素の流失を少なくし,洗米排水による環境汚染を防止することにも重要な役割を果たしている。
 無洗米を製造する無洗化処理装置は,精米機では完全に除去できない白米表面の糊粉層を完全に除去し,水分16.0%以下の白米に仕上げるもので,乾式と湿式及び特殊方式がある。乾式無洗米は,白米表面に残留している糊粉層を完全に除去できないため,炊飯前に1〜2回水洗いする必要がある。また,湿式無洗米は,残留糊粉層を完全に除去できるが,栄養分の流出と除糠水を処理するための排水処理設備が必要とする等の課題がある。                                 
 乾式と湿式の課題を解決したのは図1 に示す特殊無洗  化処理方式で,白米に約5% の霧状水分を噴霧しながら糊粉層を湿潤させ,白米重量の約1/2のタピオカ(80〜100℃)を混入して軟化された糠類を吸着・除去する方法である。本方式で得られる無洗米はTWRと称し,普通白米 と比べ,炊飯後の時間経過によるご飯の食味低下が少ないことがわかった。     

                                                                                    
 
                                                  

                                        図1 無洗米(TWR)の加工フロー図

3.新加工3.新加工無洗米(コーティング米)
コーティング米は無洗米に増粘多糖類を水溶液とし,これに機能性成分(FeとビタミンE)を加え,瞬時に噴霧攪拌して仕上げるもので,通常の無洗米と違って加工米として販売されている。また,新加工無洗米は,精米(砕米)と無洗米処理糠を用いた糖化液を,無洗米に対してある一定量の割合で高速噴霧攪拌しながら被膜加工して水分上昇分を高速乾燥仕上げるものである。米本来の栄養成分として,オリザノール,イノシトール,食物繊維等が付加されている。新加工無洗米は洗わないで炊飯することができ,ご飯として食した場合,加工前の米と遜色がない食味になっている。

4.無洗発芽米
 弊社は穀類にギャバを自然富化する微量加水法を開発し,発芽玄米並みの機能性成分を含有し,食味・食感に優れる無洗発芽米の製法を確立した。本製法によって従来できなかった発芽玄米の搗精加工が可能となり,胚芽米や精白米の食味と食感が得られる。また,表面付着糠を固着させることにより精米歩留りが1%以上向上し,同時に洗米が不要となり,加工業者の利益向上につながる。

5.おわりに
 食の多様化に伴う栄養のアンバランスによる生活習慣病が増加している中,米食を中心とした「日本型食生活」が見直され,これからの米商品には単に栄養とおいしさのような一次・二次機能だけでなく,生活習慣病に予防効果のある三次機能も求められると思われる。

参考文献
1.金本・柴田:新しい無洗米処理装置(NTWP)の開発,日本食生活学会誌,13(1),1-7,2002.
2.(社)日本精米工業会:新加工無洗米の製造技術の開発について,精米工業,No.212,44-49,2005.
3.佐竹:高機能性米の調製加工技術の開発,美味技術研究会選書,No.4,62-83,2005.

河野元信 氏

実演と試食


 懇親会
連絡先 三宅製粉梶@(〒544‐0034 大阪市生野区桃谷3−2−5)
関西穀物科学研究会事務局 林 孝治(Tel 06−6731−0095、Fax 06−6731−0094
E‐mai:miyake@mbox.inet-osaka.or.jp)   
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