2006年 日本穀物科学研究会

第127例会

2006年9月29日(金)14:30より大関株式会社にて第127回例会工場見学及び講演会を開催いたしました。 
テーマ   工場見学及び講演会
講演  「日本酒に見出された機能性物質について」
       広常 正人氏 (大関株式会社 総合研究所 所長
1.はじめに
 日本酒の醗酵方式は、麹菌による糖化と酵母による醗酵が、モロミ中で同時に進行する並行複醗酵であるが故に、特異的な成分も多く含まれている。中でも、米デンプンから麹菌の作用により生成されるイソマルトオリゴ糖と、酵母の醗酵により生産されたエチルアルコールから、さらに麹菌α―グリコシダーゼの転移反応によって生成されるエチルα−D−グルコシド(α―EG)は、日本酒に特異的に含まれている成分の代表である。このα―EGは日本酒中に0.20.7%程度含まれる配糖体で、即効性の甘みと遅効性の苦味という独特の呈味性を示し、清酒の風味や濃厚味に関与する重要な呈味成分である。

2.肌に対する機能
 古来より、日本酒造りに携わる杜氏の手は白い、あるいは日本酒を多く飲む力士は肌が綺麗であったと言われる様に、日本酒には美肌効果があるとされてきた。しかし、日本酒の飲用による美肌効果を科学的に実証した例は少なく、特にヒトでの検証例は無い。我々は、動物実験を用いて日本酒に含まれる美肌成分の探索を行ってきた結果として、α−EGと有機酸に効果のあることを見出している。そこで高濃度にα―EGを含む日本酒を用いて、その内用が皮膚生理パラメーターに及ぼす影響について検証を行った。その結果、蒸留酒に比較して日本酒の内用時には肌の水分量が増加し、荒れ肌の程度が改善することを確認した。

3.肝障害に対する機能
 一方、日本酒の消費量が多い地域ほど肝硬変による死亡率が低い疫学研究から、日本酒に肝障害を抑制する作用があるものと考えられた。そこで、ガラクトサミン誘発による急性肝障害モデルマウスを用いて、日本酒の肝障害抑制効果を検証した。アルコールを除くことで調整した日本酒濃縮物をマウスに摂取させておくと、肝障害の指標であるGTPGOT値が改善することを確認した。この日本酒濃縮物に含まれるアミノ酸、有機酸、等質などの各分画物においても、GTPGOT値の改善が観察されたが、日本酒に特異的に含まれるα―EGにも、急性肝障害を抑制する効果があることが新たに明らかになった。

4.おわりに
 古い歴史を有する日本酒には、伝承的な様々な有用性が知られている。弊社では、それらの有用性を科学的に再評価するべく、検討を進めて行きたいと考えている。
広常正人 氏
工場見学


 懇親会
連絡先 三宅製粉梶@(〒544‐0034 大阪市生野区桃谷3−2−5)
関西穀物科学研究会事務局 林 孝治(Tel 06−6731−0095、Fax 06−6731−0094
E‐mai:miyake@mbox.inet-osaka.or.jp)   
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